3Dプリンター・業務用と家庭向けはどこが違う?目的で選ぶことが大切

特許が切れると同時に一般家庭向けの安価なものが次々に発売され、ブームとなった3Dプリンター。業務用にほぼ限定されていた3Dプリンターの家庭向け販売は画期的なことでしたが、このブームは長続きせず収束してしまいました。家庭向け3Dプリンターの低品質が消費者を裏切ったとも言えますが、この記事では業務用と一般家庭向け3Dプリンターの違いについて考えてみたいと思います。

業務用3Dプリンターと一般の3Dプリンターの違い

3Dプリンター

2009年に熱溶解積層方式の特許が切れると、多くの人々が3Dプリンタービジネスに参入しました。それまでは業務用にほぼ限定されていた3Dプリンターが、家庭向けに販売されたことは大きな出来事でした。2013年頃にはメディアで取り上げられない日はなかったほどの3Dプリンターですが、ブームはいつの間にか収束してしまいました。3Dプリンターのリスクを考えさせられるような事件も起こりましたが、それよりも消費者の心をつかめなかった原因は、家庭用3Dプリンターのクオリティが、消費者の期待を完全に裏切ってしまったことだと考えられます。それほどまでに業務用と家庭用の3Dプリンターの間には差があったのです。おかげで現在、家庭用3Dプリンターの売り上げは下降線をたどっていますが、実は業務用に関しては上向きになっています。ブームが過ぎ去ったあとも、業務用3Dプリンターは着実に進歩を続けているほか、オンラインサービスや材料なども含めた市場は拡大しています。ここからは、業務用と家庭用3Dプリンターの違いを比較しながら、使用目的に合った3Dプリンターを選ぶ方法について考えていきます。

3Dプリンター・業務用と家庭用の特徴を比較

現在、業務用3Dプリンターでは、もっとも歴史があり、安定感もある光造形方式が主力で、次いでインクジェット方式や熱溶解積層方式などが採用されています。一般家庭向けの3Dプリンターは熱溶解積層方式のほぼ一択。2009年に特許が切れたことで、この熱溶解積層方式の3Dプリンターが流通し、材料コストもあまりかからず、扱いもかんたんだとして、低価格の3Dプリンターのほとんどがこの方式を採用しました。
そう、業務用と家庭用3Dプリンターの大きな違いはこの造形方式です。造形方式については後ほど詳しくご説明しますが、

業務用=光造形をはじめさまざまな方式を採用
家庭用=ほぼ熱溶解積層方式一択

ということになっています。
業務用と家庭用の3Dプリンターは、造形方式が異なるため、使える材料も異なることになります。家庭用はほぼ熱溶解積層方式の一択となるため、光硬化樹脂、ABSなどの樹脂に材料は限定されます。すなわち、

業務用=光硬化樹脂やABSを含む樹脂、金属、セラミックなど選択肢が豊富
家庭用=樹脂のみ

ということになります。

価格の差

業務用と家庭用の3Dプリンターで決定的に違うのはその価格です。業務用3Dプリンターは通常、50万円程度~探すことが可能ですが、ミドルクラスの製品は200万円前後からになります。それが上級クラスとなると1000万円台になることもあります。
家庭用の3Dプリンターの価格は1万円前後から。上級機種でも数十万程度です。
価格については、コストパフォーマンスの高い熱溶解積層方式を使い、なおかつ機能を絞っている家庭用に当然ながら分があります。家庭用の製品は、スペックはともかくとして1万円前後で販売されている製品もあるので、比較すること自体が間違っていると言っても良いのですが、

業務用=値段の幅が大きく50万から1000万円程度
家庭用=1万から30万円程度

ということになります。
成形物の仕上りを左右する要素として注目したい数値に「積層ピッチ」があります。3Dプリンターは、層を重ねることにより立体成形しますが、このピッチが細かければ細かいほど繊細に仕上げることが可能になります。模型や試作品だけでなく、航空分野ではすでにジェットエンジンのパーツなどに利用されている業務用の3Dプリンターに、当然ながら家庭用3Dプリンターが敵うわけもありません。

業務用=0.01mm
家庭用=0.1mm

とやはり大きな開きがあります。

大きさが違う・業務用と家庭用3Dプリンター

一般家庭用の3Dプリンターは、そもそも機能が業務用よりも抑えられています。コスパの高い造形方式を使うだけでなく、必要な機能だけを装備して一般の人のもの作りに役立つ機械という位置づけになるので、大きさは基本的にコンパクトです。一方、業務用の3Dプリンターの場合は大きい製品を作る場合もあります。プリントアウトする部品が大きくなればなるほど、大きなプリンターを用意する必要があります。大雑把な判断ではありますが、大きな3Dプリンターは業務用と言ってしまってもいいでしょう。ただ、業務用3Dプリンターの中にはコンパクトで精密なものもあるので「小さければ家庭用」というわけではありません。

造形物の仕上り

造形物の仕上りの良さや耐久性の高さは、業務用3Dプリンターに一般家庭用3Dプリンターが勝つことは難しいでしょう。いくら家庭用3Dプリンターの高級機種が高い性能を備えていたとしても、現時点では業務用のクオリティには到底届きません。

造形方式について

3Dプリンター

造形方式は、造形する物の用途や素材に大きく関係します。3Dプリンターは製作する物に合わせて造形方式を選びましょう。ここでは3Dプリンターでメインとして採用されている5つの造形方式について説明します。

・光造形方式

光造形は、プールに入れられた液体樹脂に紫外線を当てて層を作り、この作業を繰り返しながら立体を作る方法です。3Dプリンターの元祖的な方法で、多くのビジネスがこの方式の3Dプリンターを導入しています。

・インクジェット方式

このインクジェット方式は、アクリル系の液体樹脂(材料)をインクジェットから噴射し、この樹脂に紫外線を当てることで成形する技術です。精度の高さと高速な作業が長所です。

・粉末焼結方式

レーザー光線を使って粉末の材料を固結させて立体造形するのが、この粉末焼結方法です。材料が粉末なので取り扱いには注意を要するのですが、金属を材料に使えるという、他が持たない魅力を持っています。耐久性、複雑な造形への対応も可能ですが、表面仕上げに若干の難があるので、なめらかな造形を期待している方には向きません。

・粉末固着方式

粉末固着方式は、材料となる石膏に接着剤を噴射して成形する技術です。粉末固着方式はフルカラーによる繊細な表現ができるので、模型などの製作に向きます。しかし、石膏なので衝撃には弱く、頑丈な物の製作には向きません。

・熱溶解積層方式

熱で樹脂を溶解し、その樹脂を出力しながら層を積み重ねる。これが熱溶解積層方式です。2009年に熱溶解積層方式の特許が切れたことで、多くの人々が3Dプリンタービジネスの世界に足を踏み入れましたが、それにより普及した家庭用の3Dプリンターに搭載されたのがこの方式です。仕上りや精度は他の方式には敵いませんが、安全に作業ができること、コストパフォーマンスが高いというメリットがあります。




3Dプリンターの造形方式は以上の5つです。自社の用途に合わせて適切な方式を選びましょう。
特にビジネスにおいては、当然のことではありますが造形物のクオリティを無視することはできません。比較的価格の抑えられた製品には、コスパに勝る熱溶解積層方式が採用されます。ただ、業務用の3Dプリンターに関してはテクノロジーの進歩もすばらしく、金属を成形可能な粉末焼結方式などを導入する会社も増えてきています。